爪を短く詰め、こんな時に限ってワセリンが用意してなくて、代わりにサラダオイルを塗りました。参道の入り口よりさらに少し奥に塊があり、表面をなでると頭と足が分かりました。正常の姿勢でした。紐をかける用意をして手を入れていましたが、前足を揃え片手で2本の足をつかみ引き出しました。思わず「生きてる!と鼻先を拭いてやったほど、つい先ほどまで生きていたのだと思います。大きな子でした。 ホッとするのもつかの間、また次の袋が弱い陣痛と共に現れました。子やぎの鼻先も蹄もやはり見えませんでした。死んでいるという判断をし、また同じように取り出してやりました。子ヤギは先ほどの子よりかなり奥の方にいて腕をずっと上の方まで入れなくてはなりませんでした。子やぎのいる場所は、熱いと表現したいほど暖かでした。なかなか頭と足の位置が分からず、最初の子の時より時間がかかった気がします。やっと足をつかんで引きだしたときには母ヤギは力尽きて、放心したようになっていました。前の子よりはいくらか小さめでした。後産は通常の分娩の時のようにじき確認できましたが、いつもなら子ヤギをやさしく呼ぶ声はしばらく聞けませんでした。夕方子ヤギがミルクを飲むのを確認できたので、母ヤギの体力の回復だけが課題になりました。4産目、まだ年ではないし、何の心配もしていなかったので、頭をコポン!とやられた気がします。こんな結果になりましたが、1頭だけでも無事に産んでくれたことに今は感謝の気持ちでいっぱいです。苦しみながらも、子やぎの面倒を見ようとする母ヤギの姿はいつもと変わらず、心に残る出産の春となりました。 |