魔法使いのヤギ 8

まえつぎ

母親はおばあさんのために、
一皿のご馳走とコップにはいったのみものを
ゆっくりと手で周りを確かめながら運んできました。

「やぎのお乳で作ったヨーグルトです。きっとげんきがでますよ。」
コップを置きながら母親がそういったとき、
おばあさんは突然母親の手をつかみ叫ぶようにいいました。
「イリアラーサ!」
それは忘れもしない、魔法使いの声でした。
イリアラーサの顔がさっと青くなりました。
「すると、このヨーグルトはミミルークレヤのだろうか?」
イリアラーサが答えました。
「いいえ、ミミルークレヤはただのやぎになって、とっくに死んでしまいましたわ。
いまいるやぎはもうだいぶ年はとっていますが、ミミルークレヤの子供です。」
魔法使いはうなづいてつぶやくようにいいました。
「そうさね、ミミルークレヤの魔法を解いてしまうなんて、ばかなことをしたものさ。
おかげで私も年をとり、もう魔法の力も消えてしまった。」

イリアラーサは、魔法使いを怖がらなくてもいいことを知り安心しました。
そして、ただのおばあさんになってしまった魔法使いを
哀れに思いました。

夕方になって働きにでていたヨーンが戻ってきましたが、
イリアラーサは魔法使いのことを、ただのきのどくなおばあさんだとヨーンに話し、
しばらく家に置いてあげたいと言いました。
醜い顔のヨーンは、やさしい声で何の疑いもなく

まえつぎ

おはなしトップへもどる