そのとき、走っていたイリアラーサが突然転びました。
「ああ、何てことでしょう。私の目が、目が見えなくなってしまったわ。」
ヨーンは、イリアラーサを背に負ぶって逃げました。
魔法使いは、ますます怒り
「私をだました小娘の味方なんぞをしたやぎはこうしてくれる。」
といって、魔法の杖をふりました。
すると、ヨーンとイリアラーサのあとを
守るようについてきたミミルークレヤが、突然「めーーえ」と鳴きました。
ヨーンが振り返るとそこには、
短い角と黒い棒のようなひとみをした目の、普通の白いやぎが歩いていました。
やがて山のふもとまで降りてくると、
もう大丈夫だろうと、ヨーンはちいさなかわのほとりで、やすむことにしました。
イリアラーサを座らせ水を汲みに行ったヨーンが声をあげました。
「何ということだ。僕の顔が、・・・」
水にうつったヨーンの顔は、それはそれは醜い顔に変わってしまっていたのです。
それから7年ほど経ったある日、
一人のよぼよぼのおばあさんが一軒の小さな家のドアをたたきました。
一人のかわいい女の子が、ドアを開けました。
「マリアレーサどなた?」
目のみえないおかあさんが小さな女の子に聞きました。
「しらないおばあさんよ。いまにも死にそうな・・・」
女の子は、少しこわがっている風でした。
「それは気の毒に、中に入れておあげ、何か食べ物を差し上げましょう。」
おばあさんは倒れるようにしていすに腰掛けると
目の見えない母親をじっと見つめていました。
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