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  そのあと前足を上げてはなのせなかにおんぶするようなかっこになりました。はなはいやがらずにじっとしていました。おすやぎはあっという間にはなのせなかからおりてまたフムフムをしました。
「今日から数えて153日めころにうまれるぞ。」
 帰るときにしんさんが言いました。
 クルミは、わすれないうちに母さんとカレンダーで数えました。はなのこやぎは来年の五月三日ころに生まれます。カレンダーの一番下に5月3日と赤いサインペンで書いて、クルミはしんさんの顔を思いうかべました。色は黒いけれどおすやぎに似た目のやさしい顔でした。
まちどうしい春
  長い長い冬の間、はなはずっと小屋ですごしました。とうさんがさくのまわりを戸でかこってってくれたので、小屋の中に雪がまいこんだりすることはありませんでした。それにしきわらをふみこんだたいひの上は、ほんのりとあたたかかでした。でも何もかもがカチンカチンにこおってしまうような朝は、はなは体中の毛を立ててだるまのようにふくらんでいました。
 やがて雪がとけ青い草がいっせいに伸び始めるころになると、はなのおなかだけがだるまのようにふくらんでいました。 
こやぎがうまれた
 朝、まだうすぐらいうちに、クルミはやぎ小屋をのぞきに行きました。
 「あっ!」
 と、クルミは声をあげました。はなのそばに何かころがっているのです。小屋の中は暗くてよく見えません。でもきょうは五月三日です。とうさんは
 「まだだな、あの調子じゃあもう一日や二日はでないぞ」
 と、きのうの夜言いました。でもくるみはずーっと「五月三日に生まれる、五月三日。」と思ってきたので、早くに目がさめるともう眠れなかったのです。
 やっぱりそうでした。すぐに目がなれてその白いものがこやぎだとわかりました。 はなは「うふうふ」というやさしい声を出しながらこやぎをなめていました。 こやぎはその声に答えるように、あたまをプルプルとふったり足をピクピクと動かしたりしました。
 とつぜんはながのどの奥から苦しそうな声をだしておなかをちぢめました。
 「二つ目がでるぞ。」   

くるみのこやぎ9