朝からはなが高い声でないています。大好きなくわの葉も少ししか食べません。しっぽをふりながら小屋の中をうろうろして、一日中ふるえる声でだれかをよんでいます。 クルミが声をかけても遠くを見つめています。秋になってからこんなことが何回かありました。 とうさんがしんさんのところへ電話をしました。 クルミはまだギブスをはめたままの右足を、松葉づえをじょうずに使ってゆらしながら、大急ぎではなのところにいきました。 「あしたの朝、おむこさんがくるよ」 教えてやっても、はなはますます声を大きくして、夜になってからもないていました。 オスやぎはやっと外が明るくなったころやってきました。大きくてはなのなん倍もあるようにみえました。立派なタテガミがあるのです。かたそうなふさふさした毛はひかってみえました。そして、ものすごいにおいがしました。 しんさんははなを見て、それからクルミを見て 「いいやぎに育てたなあ」 と言ってくれました。 クルミは少し顔が赤くなって、自分のギブスでふくらんだ足元をみました。しんさんがどんな人か見たいのに、顔をあげることができませんでした。 オスやぎは、はなのおしりをしらべてから、はなの顔や体のあちこちをフムフムとなめるようにようにしました。 → |