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  いつのまにかとうさんが後ろに立っていました。
 「はな、がんばれ!」クルミは心の中でさけびました。
 はなが、3回めに苦しそうな声をあげてふんばったとき、二つ目のこやぎが生まれました。はなは赤ちゃんのかぶっているふくろをなめはじめました。
 「でたかい?」
 と、かあさんがお湯の入ったバケツと、ぼろきれを持って走ってきました。
 「なんとまあ、めんこいこと。よかったねえ、クルミ。」
 クルミはむねがじいんとして笑いたいような、泣きたいような、とびきりうれしい気持ちでした。
 かあさんとぼろきれで、こやぎのぬれたからだをふいているときも、はなは「うふうふ」という声で、ふたつのこやぎをこうたいで呼んではなめ、呼んではなめ休むひまもありません。とおさんが、
 「どれ」
 といってこやぎの後ろ足をもちあげました。
 「オスだぞ、ほれ、チンチンがついてら、や、こいつもオスだぞ。」
 とおさんはまるで子供のように言いました。
 「ごくろうさん。」
 といってかあさんは、みそをお湯にといただけのみそしるを、ボールにいっぱいつくって、はなにあげました。するとはなはズズー、ズズーとおとをたてて、いっきにのみほしてしまいました。
 こやぎたちは、何回かひざをついたり転んだりしましたが、みているうちにじぶんでたちあがって、はなのちちをさがしはじめました。
 先に生まれたこやぎは、すぐに上手に乳を飲むようになりました。ところが後から生まれたこやぎは、はなの乳首が大きすぎて口からはみ出してしまいました。クルミがかあさんの顔をみると、
 「大じょうぶだよ。」
 と、かあさんはいいました。けれど何回やっても口から乳首がはみでてしまってうまく飲めないのです。
 赤ちゃんを産んだばかりのおかあさんが初めて出すお乳は初乳といって、赤ちゃんを守るとくべつの力を持っています。生まれたばかりのこヤギは、おかあさんヤギの乳をしっかり飲まないと病気になりやすいと、ばあちゃんはいっていました。
 クルミはまたかあさんの顔を見ました。かあさんは
 「しょうがないねえ、助けてやるか。」
 と言って、左手でこやぎのあたまをおさえながら、右手ではなの乳首をつかんでこやぎの口に持っていきました。 → 
くるみのこやぎ10