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  こやぎの口から白い乳があふれました。母さんが何回も口の中にしぼってやると、だんだんと乳首が小さくなってやっとこやぎは自分で乳がすえるようになりました。クルミと母さんは顔を見合わせて笑いました。
 その日の夕方、かあさんとクルミとでこヤギの飲み残した乳をしぼりました。片方の乳が大きくはっていて小さなクルミの手から乳首がはみ出しそうです。かあさんのをまねてひっぱるようにしてみましたが、なかなかしぼれません。やっと五回目に思いっきりぎゅっとにぎったら、じゅっとおとをたててクリーム色のとろっとした乳が飛び出しました。張っていた乳がしぼんで乳首が小さくなると、こやぎはそれぞれに両方の乳をすうようになりました。
 クルミは先に生まれたのにワカ、後から生まれたのにアオと名前をつけました。ワカは毛並みがつやつやしていて、きりっとした顔つきで、げんきよくはねまわるそれは立派なこやぎでした。アオはワカよりも小さくて、いつも口のはしからすこししたをのぞかせて、それがぽーっとまのぬけたかんじにみえました。けれどクルミにはどっちもかわいくてしかたありませんでした。
 しばらくのあいだ、こやぎたちは乳を飲むと、あとはねてばかりいました。はなの乳が白くさらっとしてくると、かあさんがコップに乳をしぼってくれました。クルミは生まれてはじめてやぎの乳を飲みました。大好きなはなのしぼりたてのちちです。あまくて、あったかくて、はなのこやぎになった気がしました。
クルミのしんぱい
  こやぎは、一日ごとに大きくなりました。外に出してやるとどこまでもくるみの後をついて来て、はなが「メエエエエエ」とよぶと、あわててとんではなのところへかけていきました。 高いところの好きなこやぎたちは、庭の東にあるおおきな木のきりかぶに飛び登るのが好きでした。はなも来たばかりの頃そのきりかぶにのぼってあそびました。クルミも小さいときそのきりかぶによじのぼったりおりたりしました。今でもままごとをするときは、りっぱなテーブルになるきりかぶです。そのきりかぶにワカと、アオと、クルミがみんないっしょにのっておとしっこをするのはとてもおもしろい遊びでした。 くるみのからだにはあっちにもこっちにもあざができました。そのあざをおふろで「いーちい、にーいい、」と、とおさんとかぞえたら、六つもありました。 こやぎが生まれてからクルミの家はかぞくがふえたようににぎやかでした。 
くるみのこやぎ11