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 そのとき、おれてころがっていた太い木の枝にクルミがつまずきました。太い枝が二つに分かれたところにちょうど足をはさまれて、足首をねじるようにたおれてしまったのです。強い痛みがあしからつきあげ、おもうように足が動かなくなったのがわかりました。たおれたままのクルミの耳もとをはなの口がくすぐりました。
 「はな、足が・・」
 クルミははなの首につかまって立ち上がろうとしました。痛くないほうの足を軸にして何とかたつことはできましたが、痛くて、一歩だって思うようにはあるけません。まだ明るいし、はなもいっしょだからへいき、と思っても、涙がこぼれてとまりません。
 はなが出口の方に向かって歩き出そうとしたので、はなの首にぶら下がるようにして片足でちょんちょんと跳んでみました。はじめ三歩、一度とまってまた三歩。でも、それでもう十分でした。はねるたびに、強い痛みがおしよせてくるのです。クルミはあきらめてそこにすわりました。
 クルミがすわってしまったので、はなはしかたない、とでもいうようにそのまわりの落ち葉をひろって食べていました。しばらくすると、涙をふくクルミの手のひらの向こうに赤い空が見えました。夕日がしずんで行くのです。
 秋の夜はあっという間にやってきます。痛みよりも寒さのほうが、だんだんとクルミにはつらくなって来ました。そのうちうす暗くなってきた空に星がちかちかと光るのを見つけました。「おかあさーん!おと―さーん!」
 クルミは初めて声をあげて泣きました。クルミがなくとはながもっと大きな声で
 「メエエエエエーー」となきました。

山の夜
 あたりが暗くなってくると、はながくるみによりそううように、しゃがんですわりこみました。
 はなの体はあたたかく、クルミはできるだけたくさん自分の体をはなにくっつけて、まあるくなりました。それでも寒いのと、こわいのと両方でふるえていました。クルミの足の感かくは、けがをしたほうもそうでないほうも、もうありません。昼間あせをかいたシャツが、だんだんと氷のシャツのように冷たくなってくるのがわかりました。おなかもすいていましたが、それよりも、「あったかいものがのみたい」とクルミは思いました。  →
くるみのこやぎ6