その日、とうさんとかあさんは、大きい町までいくつも用をたしに出かけました。 「学校、お休みの日だから、クルミもいっしょにいく? 」 と、かあさんが聞きましたが、クルミははなと待っていることにしました。大きい町まで車で一時間半もかかるのです。 「夕方、くらくなる前にはかえるからね。」 とおさんとかあさんは、クルミにやくそくを守るようにいって、お昼ごはんを早めに食べて出かけました。やくそくは、はなをつれてとおくまで行かないこと、夕方早めにはなを小屋に入れてえさをあげておくこと、その二つでした。 朝はしもがおりるほど寒かったのに、お昼からはお日様がてりつけて、とてもあたたかでした。クルミははなをつれて、クローバーがまだ青々とのこっているところへ行きました。それから、もうすっかりかれてしまった「くず」の土手を登って、林の入り口まで来ました。 はなはあたり一面にに落ちている小さな丸い葉をいっしょうけんめい食べだました。今朝落ちたばかりのアカシアの葉です。見上げるとそのとげのある木にはもうほとんど葉がありませんでした。 となりの木のえだでなにかがうごくのが見えました。リスです。クルミがよく見ようと近づくと、さっと木の向こう側にかくれてしまいました。クルミはリスのいる木の下にそっと行ってみました。。いっせいに小さな小鳥のむれがその向こうの木からとびたちました。林の中は明るくて、鳥もどうぶつもとてもよくみえました。 「ニーニ―ニー、ニーニーニー」となきながらむねのあかい小鳥がくびをたてにふり、くるっとむきをかえてとなりの木にとびうつりました。 「わ!」 何かが木からおりてきて、クルミの足もとをさっと走りぬけていきました。さっきのリスです。 リスは、はなが落ち葉を食べているわきをかけぬけて、すこしいったところでとまると、ふりかえってクルミを見ました。そうしてモゴモゴと口を動かしました。まるでクルミに何かはなしかけているように見えるのです。 クルミはそおっとリスの方にちかずいて見ました。するとリスは、すこし走っていって立ち止まり、またこちらを見ました。 クルミはまたそおーっとリスの方に歩きました。今度はさっきより近くまで来ましたが、リスはやっぱり少しだけ走っていって木に登ってしまいました。 その木には、カツラのようなぼうしをかぶった大きなまんまるいどんぐりがたくさんついていました。今度は、リスは高い枝の上からクルミの方をのぞくように見ています。クルミは見あげたままリスの登った木のほうに向かって歩きました。 そのとき、クルミがずっと遠くまでいってしまったのに気がついたはなが、とびはねるようにしておいかけてきました。びっくりしたリスは、枝を伝ってとなりの木に走りさりました。クルミも思わず走りました。 「あっ!」 → |