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クルミはいそがしい

 次の日からずーっと、クルミは早起きです。
 はなは小屋から出してやるとクルミの後をついて歩くようになりました。もうクルミはひとりぼっちのしょんぼり屋ではなくなりました。だってかあさんが言ったとおり、はなが来てからクルミはものすごくいそがしいのです。
 小さなからだに大きなかごをしょって、土手をおりてくるのはクルミです。かごのなかにはあかつめくさや、いたどりや、はなの好きな草がいっぱいつまっています。メエーエエエと、家のほうからはなの声が聞こえます。速く歩こうとすると、重いかごがせなかでおどりました。さくに前足をかけて、首をのばしてクルミをよんでいるはなは、きたときの倍もあります。
 「いっぱいたべな。」
 おいしい草をたべるとき、はなは口をモゴモゴさせながら、のどのおくから「ウグウグ」 と声を出しました。
 クルミにはそれが「うまいうまい」 と聞こえました。
 それからクルミは台所へ行って、かあさんに米のとぎ汁と野菜くずの入ったバケツをもらいます。
 「ふすま大もり一ぱい、米ぬか一ぱい、大豆かす半分、リンカルひとつまみ。」
 さっさかかきまぜる手つきは、一人前のしいく係です。
 「はい、できあがり。」
 はなは、口のまわりをベチョベチョにして配合のえさを食べます。水を飲むときは、「ズズズー」 と音をたてて飲みます。
 その間にクルミは新しいワラをしいてやったり、ブラシで体をこすってやったりしました。するとたいてい「ごはんだよー。」 と、かあさんのよぶ声がするのです。
 クルミが学校にでかけると、かあさんがはなを外に出します。おいしい草のあるところ、こかげのすずしいところにつながれて、はなはのんびりと草を食べたりひるねをしたりして、クルミの帰りを待っています。

 学校のバスがまだ見えないうちから、はながなきだしました。バスからひとり降りてきたクルミは、まっすぐはなのところにとんで行きます。草の上にカバンをポイ!となげて、はなをつないでいるひもの金具をはずします。
 深く打ち込んだ鉄のぼうを心にして、コンパスで円を書いたようにはなが草を食べて歩き回ったところがきれいになっています。そこを土俵にして、くるみははなとすもうをとります。
 はなには角はありませんが、かわりに石のようなこぶがありました。クルミが、えいっとおすと、はなはあとずさりして前足をあげ、あごをひいてドン!とクルミをめがけてぶつかってきます。
 たいていは引き分けでしたが、ときどきクルミがしりもちをつきました。だっていまではもう、はなのほうがクルミよりずっと大きいのです。  
くるみのこやぎ 3