ぷるんごのひみつ 

 その日もソンはクープにたっぷりの草を食べさせて、家にかえってきたところでした。庭に入ろうとしたソンが、何かにおどろいて急に足を止めました。
 
庭のぷるんごの木の下で、そのおじいさんが、まるくなってねむっていたのです。おじいさんのそばには、いつも持っている大きな袋がおいてありました。しかも、その袋の口がすこしあいていました。ソンは、そーっとおじいさんのそばへ近寄ってみましたが、おじいさんは、ねいきも立てず、まるで死んだようにねむっていました。
「あのー」
ソンはちいさなこえでいいました。へんじはありません。ソンは袋に目をやりました。ちょっとその袋の中をのぞいてみたいと思いました。そして、手と頭を袋にちかづけました。その時です。ブオーンと音を立てて、袋の口からまるで煙のようにくろいかたまりが飛び出しました。その黒いものは、みるまにソンのからだを包み込んだかと思うと、そのまま袋の中にすいこまれてしまいました。クープの『メエーーー』というかんだかい声が、あたりにひびきわたりました。
しばらくすると、一匹のミツバチがその袋の口から、ブーンと小さな音を立てて飛び出してきました。ミツバチは、いちもくさんにぷるんごの木をめがけてとんで行きました。そうして、満開に咲いているぷるんごの花から花へと飛んで、蜜ではなく花粉を集めたのでした。
ミツバチは花粉が持ちきれないほどの大きなお団子になると、袋に帰りました。何度も何度も、行ったり来たりしました。
やがて夕暮れになると、ミツバチは、袋の口から出てこなくなりました。むっくりと立ち上がったおじいさんは袋の口を閉じて、いつものように肩にかつぐと、どこへともなく歩きさっていきました。
かい主のいなくなったクープがメエメエとないているので、ソンのお母さんは、これはむすこに何かおこったにちがいないと、夜じゅうねむらずにさがして歩きました。あの、白いひげのおじいさんが、ソンの家のプルンゴの木の下で眠っていたという人がいました。
それで、おじいさんもさがしましたが、やはりみつかりませんでした。ところが、おじいさんはつぎの日のお昼頃、じぶんからソンの家にやってきました。なにを聞かれても、おじいさんはわずかに首をかしげるだけで、何もこたえませんでした。お母さんはとうとう大きな声で泣き出してしまいました。クープが、それにあわせるようにさらに大きな声でなきました。おじいさんは、すこし困ったような顔をして、肩から袋を下ろすとその口をすこしあけました。するときのうとおなじようにブオーンと音を立てて黒いかたまりが飛び出し、おじいさんのまわりをまわり始めました.

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