ぷるんごのひみつ 

 それはよくみると煙ではなくたくさんのミツバチでした。やがてミツバチのかたまりは、何かをまっているかのように、おじいさんの顔の前でぴたりと止まりました。すると、おじいさんは袋の中に手を突っ込んで、その手のひらに山もりのぷるんごの花粉を取り出しました。それを、大きな口を開けてひとのみにしたかとおもうと、口をもごもごと動かし、それから、そのくちをとがらせて、ふーっと、大きくふきました。うす黄色の粉が、きりのようにふきだしてたくさんのミツバチにかかりました。からだ中花粉をいっぱいつけたミツバチがばらばらになって、とおくのぷるんごの畑を目指してと飛んでいきました。ところが、一匹のミツバチがどこへも行かず、クープの頭に止まりました。するとクープが甘えるような声で、「メヘメヘメヘ」とないたのでした。その声は、クープがソンにあまえるときにだけだす声でした。それで、おかあさんにはわかりました。
「なんと言うことでしょう。このみつばちは、わたしのむすこのソントンリッキーだわ。」
おじいさんが、クープの頭の前に手を差し出すと、そのミツバチはおじいさんの手のひらに乗りました。おじいさんはもう片方の手を袋の中に突っ込むと、さっきとは違う金色の花粉を指の先にほんのすこしつまんでいました。そしてその花粉を、みつばちのソンにふっとふきかけました。金色の花粉につつまれたみつばちが、庭のぷるんごの花から花へと飛び回りました。何千、何万とも数しれないその花のすべてを、ソンのみつばちはひとつ残らずたずねて回りました。みつばちが、花のめしべに触れるたびに、ぷるんごの花は、そのはなびらをほんの一瞬金色にかがやかせました。
どれくらいかかったでしょうか。「さあ、おわったよ。」とでもいうように、ソンのみつばちは、再びクープの頭に止まりました。おかあさんは、このふしぎなできごとにただ驚いて、長い時間ぽかんとみているばかりでしたが、ヤギのクープは、のんびりと口をもぐもぐやっていました。
やがて、村中のぷるんご畑に散らばって行ったミツバチたちが、てんでに密をいっぱいもってかえり、袋のなかにはいっていきました。けれどソンのミツバチは、袋に入りませんでした。おじいさんは、それを気にもかけず、袋の口をとじると肩にかついで庭から出て行こうとしました。やっと気を取り戻したお母さんは、あわてておじいさんに声をかけました。
「まってください。」
おじいさんはたちどまると、大きく二度うなづいて、肩にかついだ袋をおろしました。おじいさんは袋の口をあけ手を入れて、蜂蜜のたっぷりと入った器をとりだすと、それを黙ってお母さんにわたし、ふたたび袋をかついで出て行ってしまいました。
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