魔法使いのヤギ 4
まえつぎ

イリアラーサは、魔法使いの家に急いで帰りました。
魔法使いは出かけていてちょうどるすだったのです。
ヨーグルトを作るための暖かい「むろ」の戸を開けると
ぷーんと発こうのにおいがしました。
イリアラーサは一番手前のカップを手に取り
ヨーグルトをほんの少しわざとこぼしました。
そうしてヨーグルトのカップをもって急いでヨーンのところに戻りました。

イリアラーサはひざをついてヨーンの頭を少しおこしました。
けれど意識のないヨーンはヨーグルトをのむことができません。
「ミミルークレヤ、この若者はまだ生きているわ、
でもどうしたらこのヨーグルトをのますことができるかしら。」
ミミルークレヤは緑色の目でじっとイリアラーサを見つめました。
そしてヨーンの口元に顔を寄せると、 ハムハムと話し掛けるようなしぐさをしました。
するとヨーンの口がかすかに動き、
イリアラーサはその口にヨーグルトを流し込むことができたのでした。
ヨーンの耳に突然小鳥のさえずる声が聞こえました。
「ああ僕はまだ生きていたんだ。」
とまだ遠い意識の中でヨーンは思いました。
そして目を開くと美しい少女の顔が目の前にあり
少女の隣には、金色に輝く角と緑色のひとみ、山のふもとから見たあの魔法のやぎが、やさしく寄り添っていました。
「あなたは、なぜこんなところに一人でたおれていたのですか?」
イリアラーサはヨーンにたずねました。
ヨーンは、自分が王子であること、
町で悪い病気が広まり、多くの人が次々と死んでいること。
王様に言われて、魔法のやぎを捕まえに来たことを、
正直に何もかも話しました。

まえつぎ

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