ヨーンの醜い顔も、イリアラーサの見えない目も、
マリアレーサには、あたりまえのかけがえのないものでしたが、
今では、魔法使いのしわくちゃの顔も、同じようでした。
「一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本、
わあ、またふえたわ、おばあちゃんのしわが九本になったわ。」
マリアレーサは、ヨーグルトを飲む魔法使いの額の皺のかずを
楽しそうに数えました。
「おや、まあ、そんなになったかい。それじゃあ、もう行かなくちゃあね。
実はその前に、おまえにプレゼントをしたいんだが、
マリアレーサ、私が魔法使いだってこと知ってたかい?」
マリアレーサはニコニコ顔で言いました。
「魔法使いなら、魔法をつかえるんでしょ?
おばあちゃんはどんな魔法がつかえるの?」
「たとえば、おまえが何かを望めば、
たいていのことをかなえられると思うよ。」
「ほんと?じゃあ、私を王女様にできる?」
魔法使いは笑って
「ああ、できるとも。ただし、私が死ぬときにね。
だからちょっとだけ、待っておくれね。」
と答えました。
するとマリアレーサは、なーんだと言うような顔をしていいました。
「おばあちゃんが死ぬんなら、あたし王女様なんかにならなくてもいいわ。
ね、おはなしきかせて!」
その次の日、魔法使いは死にました。
魔法使いのぬけがらは、まるでミイラのように
しわだらけで小さかったということです。
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