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ばあちゃんがこやぎをつれてきた!
 どうしてもやぎを飼うというクルミには、ちゃんと理由がありました。死んだばあちゃんとのやくそくです。病気だったばあちゃんは、小さなクルミにいつもやぎの話をして聞かせました。
「元気になったらまたやぎを飼おうな。」
「きっとだよ。」
「ああ、きっとだ。」
 それなのにばあちゃんはきょ年の秋、クルミの知らないじいちゃんや、ばあちゃんが大好きだったやぎたちの所へ行ってしまったのです。山おくにあるクルミのぶらくには、子どもはクルミしかいませんでした。
「ばあちゃんのうそつき、元気になってやぎ飼うってやくそくしたのに…」
 クルミはばあちゃんが死んでから、いつもひとりでしょんぼりしていました。
 冬のあるばんのことでした。 クルミは「メェー」というなき声で目がさめました。外に出てみると、雪の中に黒い人かげと白いものが見えました。
 「やぎ、つれてきてやっただ。」
 それはなつかしいばあちゃんの声でした。
 「ばあちゃん!」
クルミはばあちゃんにとびつきました。それからこやぎをそっとだき上げました。こんな寒い夜なのに、こやぎのからだはあたたかく見かけよりずっとかるいのでした。
 「かわいいなあ!」
 「しっかりめんどうみるだぞ。」
 そういったかと思うと、ばあちゃんのすがたが消えてありません。
 「ばあちゃん!どこへいっただ、ばあちゃん!」
 クルミの声にびっくりして、とおさんとかあさんがおきてきました。
 「ばあちゃんがこやぎをつれてきただ。ほら。」
 ところが、だいているはずのこやぎもクルミのうでのなかから消えていました。   
くるみのこやぎ 1