たいへん物知りなやぎの博士がおりました。
ある日やぎ博士は、かわうその船頭の小さな船で川を渡っていました。やぎ博士はかわうそに話しかけました。
「船頭さんや、おまえさんは哲学についてどう思うかな?」
かわうそは面食らって言いました。
「博士様、おいらそんなむつかしいことは、一度だって考えたことがありましねえだ。なんせ哲学ってもんを勉強したことがねえんです。」
「なんと船頭さんよ、世界はどのようにあるのか、おのれがなぜ生きているのかを考えたこともないと?なんということじゃ、それではおまえさんは生涯の四分の一を無駄にしたというもんじゃ。」
かわうそははずかしそうにすこしうつむいて舟をこいでいきました。